仕方がない・・・。
違和感は払拭出来ないままだが・・・状況証拠は、ほぼ固まっている。
不動本人である事。
ウイルスソフトというキーワードに何らかの反応を現した事。
いずれにせよ・・・この道を歩み続ける事がカイザーを殺した『ヤツ』へと繋がる一本道なんだ。
オレが選んだこの殺し屋という道を・・・。
オレは、迷いを捨て、改めて銃口を不動の眉間に合わせた。
この引き金を引いた次の瞬間、不動遊星はこの世から消え失せる。
オレは・・・、諸悪の根源を断つ。
それで良い、それだけだ・・・。
オレは間違ってなどいない。


・・・。


でも・・・どうしても引き金を・・・






っ!!






次の瞬間、不動の眉間を弾道が貫き、開いた真っ黒な穴から鮮血が吹き出した。


何っ!?


貫いた弾道の衝撃から不動の体は壁へと弾かれ、壁を血で汚しながら崩れ落ちる・・・。
・・・オレじゃ・・・ない。
オレはまだ引き金を、引いていない・・・?
それなのに、目の前の不動は確かに絶命している。
それも、正確に眉間を撃ち抜かれて・・・。


・・・。


オレは慌てて、すぐに拳銃を握り締める右手を確認しようとしたが、

「ブラボー!!Excellent!!Congratulation!!素晴らしいものを見せて頂きまシた!!」

突然、背後から陽気な声が聞こえてきた。
急な掛け声に身がすくむ。
反射的に右手の銃を懐に仕舞い込み、振り返ると、デイビットがいた。
一体いつからそこにいたのか・・・、デイビットは楽しそうに手を叩き、高揚した面持ちで近付いてくる。
デイビットはオレの右手を取り、跪いた。

「YOUの腕を見込んでお願いしたい事がありまス」

目の前で絶命した不動。
突然、姿を現したデイビット。
そのデイビットは、高揚した様子でオレの手を取り『お願い』だなんて言いだした・・・。

「お願い・・・?」

デイビットの言葉を繰り返すも、オレは目の前に転がる不動の死体が自らの手によるものなのか誰か別の者によるものなのかで気が気でない・・・。

「Meのボディガードをお願いしたいのデス」

呆然としているオレにデイビットは気遣う事なく話し続ける。
ボディガードだなんて・・・。

「Meのような立場になると、当然命を狙われる事も多くなりまス。毎日が不安で夜も眠れない日々が続いていまス」

デイビットは次々に言葉を浴びせるが、今の状況が掴み切れないオレにはデイビットの依頼は上の空だった。

「アンタ程の権力者なら、優秀なボディガードは腐る程いるだろ」

断片的に耳に残った言葉を頼りに適当に回答すると、デイビットは首を左右に大きく振った。

「Never!身の危険を案じてか、会社が大きくなるにつれ、ボディガードの離職も著しくなるばかりデス」

そんな事・・・今、急に言われたって・・・。
でも、必死にオレを見つめ続けるデイビットの姿に少し同情してしまう・・・。
確かに、権力と危険は隣り合わせ。
目の前で、オレの手を握り締めて懇願を続けるデイビットに・・・繰り返し、何度も依頼されるが・・・。



ボディガードを引き受ける
ボディガードを引き受けない